こう聞かれると「家・住まい」とお答えになる方がほとんどですね。無理もありません。業者側は「人生最大のお買い物です。当社にお任せ下さい。」とお客様を説得します。お客様は「人生最大の買い物なんだから、もう少し考えさせてよ。」と返します。ごく自然なやり取りですね。でも違うんです。本当に人生最大のお買い物は他にあるのです。それは住宅ローンなんです。2,000万円の家を2,000万円で購入できるのは現金、キャッシュでご購入の方です。住宅ローンには金利がかかります。2,000万円を金利1.5％でお借入れ、35年のご返済とします。月々のご返済は約61,236円です。35年の総支払金額は約2,571万円です。そうです。人生最大のお買い物は住宅ローンなのです。

以前から住宅雑誌などで、「頭金を多くしてお借入金額を抑える。繰り上げ返済をして返済期間を短縮するのが得です！」と言われ、既に定着しているようです。“損得で言えば”得なのでしょう。ちょっと厳しいお話になりますが、こんなケースを考えてみて下さい。あるだけの現金と親御様からの支援を全て自己資金として使い、貯蓄の分も繰り上げ返済に充てる。住宅ローンに団体信用生命保険（※1）がついているから保険を見直して補償内容を落として保険料も下げました。そんな時に不幸にもご主人がお亡くなりになってしまいました。残されたご家族はここで気付きます。自己資金に充てるため貯金は使い果たしてしまいました。その後も繰り上げ返済を優先していたため貯蓄はありません。親御様からも支援を既に受けてしまっていますから、親御様に頼るわけにはいきません。団体信用生命保険がありますから住宅ローンの残債は無くなりますが、補償内容を下げた保険の保険金では立ち行きません。結局、家を売るという選択を余儀なくされました…。さらに厳しい状況としては、長期の入院が伴う場合、入院費用やその期間の生活費、住宅ローンの返済もしなくてはならなくなるというケースも充分に考えられます。悲しく厳しいお話です。しかし、「頭金を多く・繰り上げ返済をして住宅ローン返済は最短に」を実践した結果ですよね。このケースの場合大事なことを一つ忘れてしまっています。それは危険回避、リスクヘッジです。住宅ローンを組んだら損得は二の次です。長いご返済期間となります。リスクヘッジを考えましょう。そして、そうならないための資金計画が必要であることはお分かり頂けますね。同時に資金計画は家を買うためのものではなく、買った後の安全安心、豊かな暮らしのための計画であることもお分かり頂けようかと思います。
※1…万が一の場合に、お借入残高を補償する生命保険です。詳細は金融機関等にお問い合わせください。

端的に言うと、事前に資金計画を立てておくと無理なく安心安全に、あなたが買うべき家を探し、あなたが買うべき家を買うことができるようになります。ご自身が組むべき住宅ローンの内容・住宅に使っても良い金額・いざというときの備え・これから先の人生設計・家計の健全維持などの基準を知ったうえで安心安全な家探しができます。つまり、進むべき方向のデータ（ご予算・ご要望・ローン商品など）を持って進むことができるようになります。非常に正確な判断基準をもって、理想とする家を見つけたら素早く正しい判断ができます。今、住宅ローン金利は史上最低水準です。これ以上下がっても金利ゼロにはなりません。ということは…タイミングは分かりませんが、金利は上がるしかないということにならないでしょうか。1％金利が上昇するとどうなるか。3,000万円を金利0.55％、35年返済でお借入れになると総支払金額は約3298万円です。1％上昇して1.55％（これでもかなりの低金利と言えますが）になった時の総支払金額は約3,888万円です。その差590万円です。たった1％で590万円です。そして金利の上昇は始まったら早いです。スピーディーかつ、正確な判断をするためにも事前の資金計画が大切ではないでしょうか。